約束
温かな重みを腕に抱いて、心地よく眠りについたはずなのに、
小さな、不自然な動きを感じて目を覚ましてしまった。
薄く目をあけるとそこはまだ暗く、朝でないことは確かだった。
一体今が何時なのか、それはたいして重要ではなく、
今腕の中で眠りから程遠い位置にいる彼が何を思っているのか、
それが気になって仕方がなかった。
腹の火傷の痕に手を添えて、親指で何度もそれをなぞっている。
視線もそこに注がれているようで、それは自然で、不自然だった。
声をかけようか迷ったが、寝たふりをすることにした。
どうせ問いただしでも、別に、と答えるだけなのだ。
それよりも。
傍に君がいる。
奇妙な行為の中にある変わらないぬくもりを感じていたかった。
目を閉じて君の指の動きを追ううちに、また夢の世界へ戻っていたみたいだ。
朝、目覚まし時計がいつものように鳴った。
それで目を覚ました瞬間に、昨夜の不自然さの名残を感じた。
いつからそうしていたのかわからないが、
君がそっと私の胸に耳をあてていた。
そのわずかな動揺を鼓動に聴きとったのか、
君は上を向いてただ
おはよう。
と言った。
淋しそうで、悲しそうで、それでもどこか諦めが見える瞳は、
何か言葉を発しようとしてはやめるということを繰り返していた。
それに気付いたけれど、あえて問うことはせず、
おはよう、と小さく返事をした後に、
ひとつその唇に口づけを落としてから立ち上がった。
いつもなら食事の支度ができるまで、
ベッドの上で夢と現実を行き来している君が立ち上がる音を背中に聞いて、
不自然が終わらないことを感じ取った。
2011.08.17
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*Roy+Edward
© 2011 Nami NAKASE