8.掌





冷たい人だと思っていた。

それでも惹かれている自分が信じられなかった。





その唇が吹雪を纏って吊り上がるのを覚悟していたのに、

不意打ちのあたたかい掌。





俺の頬を包んだから。

俺の頬を優しく包んだから。



だから、

唇が近づいてくるのを、ただ眺める事しかできなかった。










 



*一周年祭



© 2011 Nami NAKASE