30.記憶





記憶の中にいる貴方は

思えばいつも難しい顔ばかりしている



少し眉間に皺をよせて

少し厳しい眼差しを持って





だから今、目の前にいる貴方は

記憶の中にはいない貴方



だってほら、優しい口元

だってほら、温かい視線





その顔で好きだなんて言うのは、反則じゃないか

その顔で君はどうなのなんて聞くのは、ずるいじゃないか



そんなの、とうの昔に決まっているのに









これからの記憶の中にいる貴方は

きっといつも優しい顔をしている



その陽だまりのような優しい微笑みが

その包まれるような温かい視線が







ずっと、俺の傍にあればいい










 



*一周年祭



© 2011 Nami NAKASE