手紙







手紙が良いとかいうから、仕方なく書いている。

無事、目的地に着いた。

Edward Elric





折角の手紙なんだから、もう少し長く書いてくれてもいいのに。

しかし、君が手紙を書いてくれただけで十分に嬉しいよ。

また移動するときには、次の目的地と滞在する場所を報告するように。

Roy Mustang





前の手紙に書き忘れた。必ず手紙の返事は書くこと。

これは命令だ。

Roy Mustang





それは職務乱用というのではないでしょうか。

返事を書こうにも書く内容が何もありません、大佐殿。

Edward Elric





君の厭味が遠くにいても聞けるだなんて、幸せだと思うよ。

それにしても元気にしているみたいでよかったよ。

なんせ返事が随分と遅かったからね。

こちらは中尉が厳しいおかげで、真面目に働いているよ。

本当なら、今すぐそちらに行きたいのだけれどね。

Roy Mustang





いくらなんでも、返事が早すぎやしないか?

ちゃんと仕事しろよな。

優秀な中尉に迷惑ばっかかけんじゃねぇぞ。

Edward Elric


P.S.絶対こっちには来るな!





来るなと言われると行きたくなるのが人間というものじゃないか。

しかし、こちらもなかなか忙しいのでね。

やはり行けそうにもない。

この前中尉に休みをとりたいと言ったら、

寝言は夜におっしゃってください、と笑顔で言われたぞ。

当分真面目に働いてご機嫌を伺わないと、休みなんて一生もらえなさそうだ。

Roy Mustang





忙しいって、どうせデートで忙しいんだろ。

真面目に仕事しろ!

Edward Elric





なんだ、妬いてくれてるのか?

心配するな、デートなんかもうずっとしていないよ。

最後のデートはいつだったかな。

たぶん君が出発した日じゃないかな。

それにしても、まだ浮気の心配をしているなんて、君もわからない人だな。

愛してるのは君だけだよ。

Roy Mustang





悪かった。

こんな手紙、他の人間に見られたらどうするんだ、って怒っているんだろう?

仕方ないじゃないか、君が隣にいないから手紙にするしかないんだ。

Roy Mustang





じゃあ電話にしろ!

Edward Elric





ねぇ、君。

君の言葉は一文字でも愛しいのだけれど、

待ちに待たせた手紙が一行なのは、さすがに寂しいよ。

というわけで、この手紙を書き終わったらさっそく電話をかけさせてもらうよ。

Roy Mustang





長電話はやめろ。

変な事も言うな。

どうだ、今日は三行だぞ。

Edward Elric





量が増えたのは嬉しい限りだけどね、

もうちょっと何か書く事はないのかね。

君が忙しいのもよくわかっているけれど、なにかあるだろう?

ところで、こちらは向日葵が綺麗に咲いているよ。

綺麗な色は君みたいだね。

そちらはどうだい?

Roy Mustang





向日葵はこっちも咲いてる。

まるで迷路みたいだった。

こっちで面白い話を聞いた。

気が向いたら教えてやるよ。

Edward Elric





面白い話か、君が言うんだから相当面白いんだろう。

ぜひとも聞きたいな。

帰ってくる日に君がご機嫌だといいのだけれど。

そちらは順調かい?

無理にとは言わないけれど、秋桜が咲くまでに一度帰ってきてほしい。

Roy Mustang





ご機嫌とるのは、あんたの役目だろ。

まあ、頑張ってくれよ。



秋桜?なんでまた?

Edward Elric





私の役目か、そういえばそうだったな。

それでは最高のもてなしをさせて頂こう。

精一杯頑張らせていただくよ。



君がいってからもう随分経つ。

秋は人恋しい季節だしね。

Roy Mustang





わかった。

Edward Elric





返事が遅れてすまない。

最近随分と立て込んでいたんだ。

もしかしたら君から催促の手紙が来てやしないかと、期待していたのだがね。

そろそろ一段落しそうかい?



この間、秋桜の種を蒔いたんだ。黄色い花が咲くそうだ。

Roy Mustang





催促の手紙なんて書くわけないだろ。

あと、もう少し。

Edward Elric





書いたけど、送らなかっただけじゃないのか?

そうだったら、嬉しいな。

もう少しか、頑張れ。

こちらは、街に秋桜のつぼみがちらほら見えるよ。

Roy Mustang





兄さんが風邪をひきました。

大佐の手紙が来るとすぐに返事を書こうとするので、

この前の手紙はまだ兄さんに渡していません。

元気になり次第返事を書くと思いますので、

少し待っていて下さい。

Alphonse Elric





アルフォンス君

全快するまで私の事は気にしないように。

この前の手紙も、全て事が済んでから渡してくれて構わない。

よろしく頼む。

Roy Mustang





遅れた、悪い。

来週あたりに帰れると思う。

秋桜がもう咲いてる。

Edward Elric





汽車の時間を教えて欲しい。

迎えに行くよ。



街の秋桜は、ワインレッドやピンクで綺麗だよ。

でも、私の黄色い秋桜はまだ蕾なんだ。



だから、まだ秋桜は咲いてない。

Roy





明日の20時30分に着く。

あんたの秋桜が咲く前に迎えに来い。

Edward









Die Blume brueht aber sehr schoen, wie dein Laecheln.



2010.08.30




*Roy+Edward








© 2010 Nami NAKASE